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トランスファー

 LSDを装着した方が遅いのでは? (2007.03.03 改稿)
【問】 LSD(差動制限機構付きディファレンシャル)を装着すると 
テールスライドし易くなるのですよね? 
 という事は、LSDを装着した方が遅いのではありませんか? 
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【答】 オープンデフには致命的な欠点があります。 
 それは「内輪が空転すると加速できない」と云う点です。 
 差動制限が強く作用していると、内輪が引き摺られるので求心力が低下します。 
 が、しかし、そもそも強い横Gが掛かって居る時には、荷重が移動していますから、内輪の接地圧が 低くなっています。 
 著しく接地圧が低下すれば、たとえ引き摺られていないタイヤでも期待するほどのグリップ力は得ら れません。 
 オープンデフで、この様な状態に駆動力を与えても、内輪が空回りするだけです。 
 つまり、内輪に駆動力が逃げますので、外輪を駆動することができません(=失速)。
 また、空回りする内輪は「引き摺り状態」比べ、更にグリップ力が低下しています。

 一方、LSD付きで、この様な状態に駆動力を与えると、内外輪両方に駆動力が伝わります。 
 内輪は「引き摺り状態」乍らではありますが、そこそこのグリップ力を発揮します(少なくとも「空回り状態」 よりも高効率)。 
 外輪はドライブシャフトからの入力に応じて地面を蹴って、加速できます。 

 制動能力・旋回能力が同じなら、クルマの速さを左右するのは加速力です。 
 溶接デフロックならともかく、駆動力を与えない時のLSD付きデフの差動制限は、イニシャルトルクの みですから、さほど大きくありません。 
 ハーフスロットルで旋回する時は、(旋回速度が、オープンデフとLSD付きで大差無いのであれば)加速力に大き な差がある分、ラップタイムはLSD付きの方が短くなるのです。 

 なお、余談ですが、溶接デフロックは、駆動力を与えなくても、旋回中に内輪を引き摺ります。 
 したがって、内輪の求心力が低下するために、旋回加速しない(あるいは緩やかにしか旋回加速しない)シチ ュエーションに限ってはオープンデフよりも遅くなることがあります。  また、強い横Gを受けて内輪の 接地圧が下がり過ぎると唐突にヨーモーメントが大 きくなってスピンモードに陥ることもあり高速コーナ リングで危険なこともあります。 

 デフロックが速いか、LSDが速いかは、あるいはオープンデフが速いのか…は、その旋回のシチュエ ーションによって変わります。
 必ずしもデフロックが速い、あるいはLSDが速い、オープンデフが速いと決まっているわけではありま せん。
 オープンデフもしくは拘束力の弱いLSD装着車輌が強い旋回加速をした際に、荷重の小さなイン側タ イヤが空転して [ イン側タイヤの回転速度 ] > [ アウト側タイヤの回転速度 ] となるようなシチュエー ションなら、デフロックあるいは拘束力の強いLSDを装着したクルマの方が速く走れます。
 オープンデフもしくは拘束力の弱いLSD装着車輌が強い旋回加速をした際に、 [ イン側タイヤの回転 速度 ] と [ アウト側タイヤの回転速度 ] の差がそのまま内外輪の軌跡の差になるようなシチュエーショ ンなら、デフロックあるいは拘束力の強いLSDを装着したクルマの方は遅くなります。
 ただ、オープンデフの場合、簡単に内輪が空転してしまいますので殆どのシチュエーションで一番遅く なってしまいます(内輪が空転しなければ速い)。

 ちょっと余談になりますが、強い旋回加速をした際に、 [ イン側タイヤの回転速度 ] と [ アウト側タイ ヤの回転速度 ] の差がそのまま内外輪の軌跡の差になれば一番速い」という理屈を具体化したの が、ランエボに採用されたAYCに代表されるトルク変動型LSDです。
 内外輪の接地圧差に応じて内外輪間のトルクを移動させれば、車体にヨーモーメントを与えつつ、内 輪は(内外輪の軌跡差に応じて)弱く、外輪は(内外輪の軌跡差に応じて)強く地面を蹴って旋回加速 することが出来るワケです。

 これに比べ、緩やかな旋回加速時は左右輪の拘束を緩めて両輪の求心力を発揮させ、強い旋回加 速時は左右輪の拘束を強めてイン側の空転を抑えるのが、R34スカイラインに採用されたアクティブ LSDに代表される電子制御式LSDです。

 似て非なる代物なんですね。


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