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内燃工学

ハイオクって燃え難いの? 02 2009.02.27一部改稿
【問】(1)ハイオクは燃え難いので燃えカスが発生し易く、それがスラッジになる。
 そのスラッジを洗い落とす清浄剤がハイオクに入っている。
 つまり、ハイオクに清浄剤が入っているのは、燃え難いからなんだ。

(2)ハイオクの混合気は燃えるスピードが遅いので、あるクランク角度の範囲でシリンダ内圧が定圧 (ある一定時間、高圧が持続する)となり、パワーが出る。
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 オクタン価が高いと何故自己着火し難くなるのか?

 それは、ハイオクを構成する炭化水素は、その構造の「鎖」が複雑だからです。 
 ガソリンが燃焼する時、この「鎖」が熱で乖離して、炭化水素、炭素、水素となり、酸素と化合します。 
 「鎖が複雑だから、熱乖離に必要なエネルギーが大きい」→ゆえに、自己着火し難いのです。 

 では、実際に点火された混合気の燃焼速度は、オクタン価によって違うのでしょうか?

 実はレギュラーとハイオクで差は殆どありません。

 何故かと言うと、燃焼が伝播する時、未燃焼混合気が触れる火炎のエネルギーが桁違いにバカでか いので、熱乖離がバンバン起こるからです。

 また、燃焼室においては、吸気時に発生した渦がピストンにぶつかって破砕された小さな渦となって 存在するため、混合気の燃焼がこの渦の速度に乗って火炎伝播速度が上がります。
 それもあって、稼動しているエンジン内におけるレギュラーとハイオクの燃焼速度に差はありません (あっても測定器の計測誤差範囲内)
 したがって、当然のコトながら、稼動中のクランク角度に対してハイオクとレギュラーは殆ど同じ圧力 変化を示します。
 ですので、「ハイオクは火が点き難い」のであっても、「ハイオクは燃え難い」のではありません。

 ネットでググると、「ハイオクは燃え難い」とか「ハイオクは燃焼速度が遅い」と書かれたサイトのオン パレードですが、真実は上述の通り。
 
 - - - 真実は多数決で決める物ではありません - - - 



 さて。

 「ハイオクを入れるとスラッジが溜まり易い」は単純に間違いです。

 「ハイオクを入れるとスラッジが溜まり易い」ではなくて、「ハイオクを要求するエンジンはスラ ッジが溜まり易い」のです。

 出力はトルク×回転数ですので、ハイパワーなエンジンは、高回転でその出力を得るように設計され ています。 空気は質量体なので瞬時に移動することができないため、エンジンのバルブは排気行程 の終了間際と吸気行程の開始直後で、吸・排気バルブがどちらも少しずつ開いている状態になりま す。 これをオーバーラップと呼びますが、高出力なエンジンは高回転時の充填効率を上げる目的で、 このオーバーラップの時間が長めになっています。
 大きなオーバーラップ時間はあくまで高回転の充填効率を上げるためのセッティングですから、低回 転時に弊害が生じます。
 それは、低回転時は作動ガスが動けるだけの時間的な余裕があるために、オーバーラップで開いて いる吸気側へ排気ガスが出てしまうということです。
 これは充填効率を下げるばかりでなく、温度の低い吸気バルブに触れた排気ガスが煤を発生さ せ、吸気バルブを汚します。

※:吸気バルブは断続的に冷たい吸気や気化前のガソリンに晒されているので比較的温度が低い

 汚れた吸気バルブは、ガソリンが速やかに燃焼室内へ入るのを阻む他、デポジットとなって要求オク タン価を上げたり、またステムに汚れが付着した場合にはバルブの動作が阻害されるなどの不具合を 生じる原因となります。

 そのため、ハイオクを要求するエンジンに使用される燃料には清浄剤が入っているワケです。

 逆にいえば、燃料代節約の目的でレギュラーガソリンをハイオク指定のエンジンへ使用した場合、単 に出力が低下するばかりでなく、吸気バルブへスラッジが堆積し易くなるため、相応の弊害が懸念され ます。

 なお、高出力エンジンでも現在主流となっている可変バルタイ式エンジンは、回転数に合わせて適切 なオーバーラップ時間に調節されますので、上記の限りではなく、ハイオク仕様にレギュラーを使用して も単に主力低下以上の悪影響はありません。



 また、清浄剤の効果はハイオクの商品性に対するブランド的な役割も担っています。
 ガソリンスタンドのニーチャンが文系脳のオッチャン・オバチャンに「ハイオクはレギュラーとどう違う のか?」を説明できるでしょうか? まず出来ませんよね。
 分かり易い説明のためのキーワードが「清浄剤」なんですよ。



 ついでに言っておけば、点火タイミングの違いも「熱の伝播スピードの違い」などではなく、単純に「要 求オクタン価の違い」でしかありません。
 理論点火タイミングで着火させるとノッキングが発生する場合に、点火タイミングを遅らせることでノッ キングが回避できますが、レギュラーはハイオクよりも多く遅角する必要があります。
 逆に言えば、理論点火タイミングで着火してノッキングの発生が無いのであれば、レギュラーもハイオ クも同じ点火タイミングです。



 ちなみに。
 ホントウに「ハイオクの混合気は燃焼速度が遅い」のであれば、二つの理由でハイオクはレギュラー よりもパワーが出せなくなります。

《ひとつめの理由》
 ガソリンエンジンのノッキングとは、膨張圧力に押されたエンドガスの自己着火です。
 つまり、[ 膨張ガスの圧力伝播 ] が [ 火炎伝播 ] よりも速いからこそノッキングが起こるのであり、逆 に [ 火炎伝播 ] の方が [ 膨張ガスの圧力伝播 ] よりも速ければノッキングは起こりません。
 (バイクの指定ガソリンがレギュラーなのは、シリンダ内径が小さく、エンドガスに早く火が届くからです)

 もし、「ハイオクの混合気は燃焼速度が遅い」のであれば、同じシリンダ内径であっても、エンドガスに 火炎が伝播するのに時間を要すことになってしまいます。
 当然、[ 膨張ガスの圧力伝播 ] が [ 火炎伝播 ] よりも速くなり、ノッキングが起こり易くなってしまいま す。

 そうです。 「ハイオクの混合気は燃焼速度が遅い」なら、ハイオクは、自己着火性が低いにも拘ら ず、稼動中のエンジンが容易にノッキングを起こしてしまう駄目燃料ということになるのです。

《ふたつめの理由》
 燃焼速度が遅くても定圧サイクルになりません。
 理論上のp-s曲線図は、理解し易いように、点火した瞬間に燃焼が終了して圧力が一気に上昇する 曲線を描きますが、実際は燃焼に時間を要します。
 そのため、実際は圧縮行程中に点火し、ピストンは燃焼して膨張する作動ガスを圧搾しつつ上昇す ることになります(上圧死点を僅かに超えた時に内圧がピークに達するタイミングで点火する)

 もし、燃焼速度が遅いのであれば、単純に圧縮行程の早いタイミングで着火しないと、内圧がピーク になるタイミングがズレてしまいます。
 つまり、燃焼速度が遅い=圧縮行程の損失が増える=パワーダウン なのです。

 ちなみに、ディーゼルエンジンは、着火性の問題で圧縮行程途上での燃料吐出が行えません(圧縮工 程中の早い段階で燃料を投与するとディーゼルノックが起こる)
 ほぼ上圧死点直前から燃焼室内へ燃料吐出します。
 膨張行程中のシリンダへ燃料を吐出するのですから、吐出時間≒燃焼時間となります。
 つまり、膨張行程中の容積変化に対して膨張ガスを追加する形となるので、高圧で定圧化し、高トル クが得られるのです。

 ただし、膨張行程中に遅れて吐出された燃料は、折角燃えて得た圧力がスグに排出されてしまいま (少しピストンを押しただけで排気行程になってしまう)ので、効率が良くありません。
 そのため、ディーゼルエンジンを燃料増量してトルクUPさせると燃費が著しく低下することになりま す。

 ちょっち余談だけど、↑は豆知識として覚えておいて損はないッスよ。 記憶の片隅にでも残しておい てネ♪


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