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オイル及びオイル添加剤

 【添加剤】 〔1〕 市販のオイル添加剤って効果があるの?
【問】 市販のオイル添加剤って効果があるの?
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【答】★文中において、用品店などで入手できるオイル添加剤は「市販の添加剤」また 「後足しの添加剤」と称しています。  これは、オイルメーカーが製造段階で添加 している様々な成分(清浄剤/酸化防止安定剤/錆止め剤/増粘剤/油性剤/極 圧剤など)と混同しないための表現です。  オイルメーカーが製造段階で添加してい る様々な成分は「オイルに予め含まれている成分」と称して区別しております。  予 め御了承の上お読み下さいます様お願い申し上げます★

 「ある」か「無い」かの二者択一なら「ある」です。
 ですが、「使うべき」か「使わないべき」かなら、「オウンリスクでどうぞ。 個人的には勧めません」で す。

 市販の添加剤は諸刃の剣だと思います。
 そしてその刃はどれくらいの鋭さか全く分かりません。
 効きも副作用も一概に「この添加剤は○」とか「×」とか言えないのです。
 何故なら市販の添加剤は添加するオイルを全く限定しないからです。
 添加するオイルはベースオイルが鉱物系なのか化学合成系なのか。
 鉱物系なら何処の原油なのか? 化学合成系ならエステルなのか、エステルなら何エステルなの か?
 添加するオイルに元々含まれている油性剤・極圧剤・その他薬品は何なのか?
 そしてそれらと市販の添加剤は混ざって性質がどう変化するのか?
 また、それらと市販の添加剤が混ざって高温高荷重下の潤滑面でどの様な化学反応が起こるの か?
 何も分からないのです。
 それどころか、そもそもその市販の添加剤がどの様な潤滑状態をどの様に改善したいのかさえ明示 されません。
 高速度低負荷と低速度高負荷では同じ潤滑状態でも全く違います。
 磨耗を防ぐのと焼き付きを防ぐのも全く違うのです。

 ・・・話が少しズレますが、特殊鋼という鉄をご存知でしょうか?
 只の鉄は大して強度も無く、錆に対しても脆弱です。
 ところが、この只の鉄にクロームやマンガン、モリブデンその他様々な元素を混ぜると性質が激変し ます。
 ホームセンターで売られている安価なボルトはハンド工具で簡単に捩じ切れますが、自動車の重要な 部分に使われているボルトは、並大抵の力では捻る事さえ出来ません。
 鉄+他の成分=ステンレスになれば鉄の性質は皆目失われて磁石にさえ引き寄せられなくなりま す。
 この様に用途に応じて様々な元素を鉄に混入して目的の特殊鋼を作りあげるのですが、その設計は 計算で解析出来ません。
 鉄+元素A=硬い特殊鋼。
 鉄+元素B=錆に強い特殊鋼
だとしても、
 鉄+元素A+元素B=硬くて錆に強い特殊鋼
にはならないのです。
 最近は理論構築も進み、何を混ぜたらどうなるのかある程度目安が付く様になったみたいですが、そ れでも最終的にはトライ&エラーで新しい鋼種を開発しています。

 オイルも似たような特性を持っていると考えられます。
 ベースオイルの差は歴然として存在しますが、添加する成分によってオイルの性質が激変します。
 しかし、何に何を足せばどうなるか解析できるのでしょうか?
 ベースオイルA+添加物P=摩擦係数の下がるオイル
 ベースオイルA+添加物Q=磨耗率の下がるオイル
 ベースオイルA+添加物R=焼き付き難いオイル
だとしても、
 ベースオイルA+添加物P+添加物Q+添加物R=摩擦係数も磨耗率も下がって焼き付き難いオイ ルになるのでしょうか?
 また、ベースオイルBでもベースオイルCでも同様でしょうか?
 また、予め添加物Jが含まれていたオイルと、添加物Kが含まれていたオイル、それぞれに添加物P +添加物Q+添加物Rを混入したらどうでしょう?
 それもまた「摩擦係数も磨耗率も下がって焼き付き難いオイル」になると言い切れるのでしょうか?

 ここにこの疑問を裏付ける資料があります。
 これは私の親しい友人から頂いた物です。

 ☆参考文献(1)橋本隆ほか:長寿命ギアオイル、自動車技●会学術講演会前刷集9●4、Vol2. p。65−68 トランスミッション耐久長寿命化によるギアオイル開発 日●技報  有機化合物の化学  化学同人などなど
 「熱安定性、極圧性およびトランスミッションのシンクロナイザリングの磨耗特性などにすぐれた基油 と添加剤を選択した上で適正な配合をたてギアオイルを研究した」
 「添加剤の候補について:大型車のデフ,レーシングカーの高油温による台上実験機試験の結 果・・・・・・・・これは添加剤が熱分解し十分極性能が発揮できなかったものと考える。 そこで3章で述 べたようにギアオイルの熱劣化寿命に大きく影響するいおう系極圧剤については実用上ギアオイルに 適合可能な化合物として考えられるR−SーSーSーRで示されるトリスルファドをすべて採用することと した。 しかしながら、この添加剤は従来のいおう系極圧剤にくらべ潤滑性(極圧性、耐磨耗防止性)が 劣るため、補助添加剤としていおうを含むりん系極圧剤、および熱安定性を考慮した酸エステルのアミ ン塩の種類を変えた化合物を組み合わせた。 さらに熱安定性およびシンクロナイザリングの磨耗特 性の向上をはかるために分散剤,金属系清掃剤および磨耗調整剤を配合し・・・・・・」
 「試作油を4種類作成した・・・・・単体性能試験により絞り込まれた試作油Aを用意て台上試験を行っ た。レーシングカーやなかでも荷重条件的にももっとも厳しい大型車のデフギア(ハイポイントギア)によ る歯車耐久試験では,市販現行超寿命オイルにに比較し、歯車の寿命が2倍以上になった。」
 「これは使用した添加剤の活性度を抑制することにより、歯車の表面腐食などが低減され、これが寿 命延長に結びついたものと考えられる」
 「ギアオイルの劣化たいして厳しい連続走行車8台を用いて試験を行った。 その結果、図8、図9に 示すように試作油Aは磨耗についても油中の鉄分濃度が大幅に低減されていることが認められた。」
 「上記で述べたように、基油と添加剤の最適な配合を行うことにより、優れたトランスミッション、デフ ギアオイルうを達成することができた。 今後はハードの改善と更なるフィルフォーライフを検討してい きたい。最後に本研究を遂行するにあたりご協力をいただいた顧客および社内外の関係者各位に深く 感謝いたします」
 ☆日●自動車技術研究所 ドライブトレーンR&D部 昭和シ●ル石油梶@などなど。。

 つまり、摩擦学の専門家ですらトライ&エラーで用途に適切なオイルの設計をしているのです。
 何故、如何なるオイルに添加しても確実に素晴らしい潤滑性能の向上が、全く害無く得られる商品な どが信じられましょうか?
 体感出来る効果が部品の消耗と引き換えでないと云う保証も何処にもありません
 (資料にも、相乗効果に因る効果過剰や効果半減の問題が取り沙汰されていました
 =「使用した添加剤の活性度を抑制することにより、歯車の表面腐食などが低減され、これが寿命延 長に結びついたものと考えられる」。)。

 百万歩も一億歩も譲って、万能の魔法の添加剤が存在すると仮定しましょう。
 何故それを競技で使わないのでしょう?
 市販のオイル添加剤の謳い文句を、そのまま信用すれば耐久レースで勝つことすら容易い筈です。
 しかし、24時間耐久レースの1位はもちろん、上位入賞者全てが使用している市販の添加剤なんて 聞いたことがありません。
 もちろん、効能を箱書きに延々と綴っているくらいですから、秘密にしているなんて奥ゆかしい事はし ないでしょうしね。


 市販のオイル添加剤が厄介なのは、効果が分かり易く、副作用が分かり難い点にあります。
 インターネットで検索すると掲示板に「○○の添加剤最高! サーキット走行でも全然タレ無いよ!」 なんて書き込みがありますが、これを額面通りに受け取る事は出来ません。
 おそらくエンジンパワーの低下が見られないからタレていないと判断しているのでしょうが、それは違 います。
 「タレ無い」の意味を取り違えている可能性があるからです。
 「タレていない」状態とは液体潤滑(※注1)が維持出来ている状態を指します。
 液体潤滑が維持出来ず、境界潤滑(※注1)状態は「タレている」のです。
 タレて境界潤滑に陥ったエンジンを、あたかも液体潤滑が維持出来ているように錯覚させることは簡 単です。
 境界潤滑でも液体潤滑並の摩擦抵抗にすればイイのです。
 そしてその方法は、腐食性の高い極圧剤(※注2)を大量に混入するだけで良いのです。
 腐食性の高い極圧剤は境界潤滑に晒されている金属表面に作用し、金属表面を改質します。
 金属表面に化合物を生成し境界潤滑に因って生じる金属同士の微細な接触を、化合物同士の接触 に変えます。
 化合物は極めて脆く、凝着(※注3)を起こさないので抵抗が少なく、焼き付きの可能性が低くなりま す。
 良い事尽くめの様ですが、化合物とは金属と極圧が化学反応して生じた物です。
 化合物同士が微細な接触をする際に削れて無くなる部分は、元々金属だった訳です。
 ですから、極圧剤に助けられて境界潤滑状態のまま稼動させ続ける事は、磨耗させ続ける事でもあ るのです。
 本当にタレないオイルとは、高温・高負荷が続いても液体潤滑を維持出来るオイルです。
 そしてその様な特性はベースオイルに左右され、市販の添加剤で改質してどうこう出来るものではあ りません(低温・低負荷下においてならポリマーの添加が有効ですが)。
 ましてや添加する対象となるオイルを限定しないのであれば、「絶対に」不可能です。

 ですから、本当はベースオイルの機能が失われて、市販の添加剤に含まれる極圧剤の機能「だけ」 で低抵抗が保たれているだけなのに「○○の添剤最高! サーキット走行でも全然タレ無いよ!」と、 喜んでいるなんて、悪く言わして貰えば馬鹿丸出しです。
 高温・高負荷でオイルがタレるのは、オイルからの警告だと考えるべきでしょう。
 タレるオイルを市販の添加剤で誤魔化して使うのではなく、適用温度の高いオイルに替えたり、オイ ルクーラーを装着(または大型化)して対処すべきです。
 何処まで油温が上がるか分からない時に、保険として入れておくことは良い事だと思いますが、市販 の添加剤で潤滑システムのグレードアップとするのは愚の骨頂ではないでしょうか?

 否、愚の骨頂でないパターンも存在します。
 どんなに素晴らしい性能を誇るベースオイルでも、高温・高負荷下でのエンジン稼動が続けば流体潤 滑が維持出来なくなります。
 ですから、どんなに素晴らしいベースオイルでも極圧剤の添加は不可避であり、それ故当然の事乍ら 製品として売られているオイルには、必要十分な極圧剤が添加されています。
 もし、この添加量が必要十分で無かった場合、そのオイルは境界潤滑下での摺動部を保護する事が 出来ません。
 ですから、高性能オイルとは名ばかりのオイルであったならば、市販の添加剤がその効果を発揮し て、摺動部を焼き付きや磨耗から保護する事もあるでしょう。
 しかし・・・社会主義国のオイルメーカーじゃあるまいし、資本主義国のオイルメーカーは、常に過当な までの競争に晒されています。
 その様なオイルメーカーが、フラグシップモデルとしてリリースするオイルに、適切な添加剤が適切な 量含まれていないなんて有り得るでしょうか?
 「有り得る」と。
 「自分の使用するオイルが信じられない」と。
おっしゃるなら市販の添加剤は必要不可欠でしょう。
 そう考えない貴兄が市販の添加剤を購入しようとされるのなら、それは「愚の骨頂」と言わざるを得無 いのではないでしょうか?

 ・・・しかし、だからといって市販の添加剤の存在を100%否定する訳ではありません。
 例えばオイルに予め添加されている成分は、オイル交換直後から消費されて含有率が下がって行き ます。
 市販のオイル添加剤が、もし、オイルに予め含まれている添加成分を凝縮したものであるならば、予 め含まれている添加成分を消費した分だけ補填していけば、交換直後の含有率を維持できる勘定に なります。
 ベースオイルの粘度低下に留意しつつ、添加物の含有量を低下させない様、市販の添加剤で補うの ならそれは非常に良い事のハズです。
 問題は、市販の添加剤の成分も、オイルに予め添加されている成分も公表されていないので、何を 継ぎ足して良いのか皆目分からないと云う事です。
 ですから、企業秘密の壁が存在する以上、市販の添加剤の有効な使用は難しいと言わざるを得ない のではないでしょうか?

 ■結論:市販の添加剤が謳い文句通りの性能なら、大手オイルメーカーも自動車メーカーも放っては 置きません。
 たちまち遊んで暮らせる程のロイヤリティが、添加剤開発者の懐に転がり込んでくるでしょう。
 何も小さな工場でちまちま少量生産して、ニッチなマーケットで細々と売る必然性は何も無いのです。
 しかし現実は量産効果の出ない少量生産で、類似商品に紛れて用品店の片隅でひっそりと売られて います。
 MJ−WORKSの様な裁判沙汰にもなっていないのですから、市販の添加剤の使用でエンジンが壊 れてしまう事は杞憂だと言えるかも知れません。
 ただ、オイルの性能は上を見ればキリなしです。
 「私は最高のオイルを使いたいからレッドラインに添加剤を使用する」という人も居ました。
高温・高負荷下でタレないオイルを求めるのであれば、ポリオール・エステルのレッドラインに件の添加 剤を混入するよりも、コンプレックス・エステルのオイルを買う事に金を注ぎ込んだ方が賢明だと思いま す。
 市販の添加剤がその成分に相応な価格で売られているならともかく、量産効果が得られ難い事を考 慮しても高過ぎる価格で販売されていると言わざるを得無いでしょう。
 にも拘わらず、オイルのグレードを上げれるだけの金を注ぎ込んで、市販の添加剤を購入するのは 本末転倒ではないでしょうか?
 考えれば考える程、極々当たり前の結論にしか辿り着かないと思います。
如何でしょうか?

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※注1:「境界潤滑」「液体潤滑」:金属平面同士がオイルなどの潤滑剤を介して擦れ合う時、擦れ方を 区別しています。
 金属表面同士の間にオイルが充満していて、金属同士の接触が全く無い状態を「液体潤滑」。
 金属表面同士の間にオイルが僅かしか無く、金属表面が直接接触している状態を「固体潤滑」。
 液体潤滑と固体潤滑の中間で、金属表面の微細な凸部同士が接触している状態が「境界潤滑」で す。

※注2:「極圧剤」:どれほど高性能なベースオイルでも高温・高負荷下でエンジンが稼動し続けると液 体潤滑状態を維持する事が出来ず境界潤滑状態へ移行します。
 境界潤滑状態になると金属表面の微細な凸部同士が接触して凝着(※注3)を起こしますので、焼け 付いたり齧りついたりする恐れがあります。
 その対策として「極圧剤」が添加されます。
 極圧剤は高温で摺動する金属表面の金属分子に反応して化合物を生成します。
 この化合物は脆いので接触しても崩れて消失し、抵抗になりません。
 ですから強い極圧剤の助けを借りて境界潤滑している摺動面は、あたかも液体潤滑の様に低い摩擦 係数になるのです。
 ただし、金属表面では化合物の生成→消費が繰り返されますので金属表面は磨耗していきます。

※注3:「凝着」:単位面積当りの圧力は[圧力]÷[面積]ですから、接触面積が小さければ小さい程、掛 かる圧力は大きくなります。
 境界潤滑、固体潤滑の摺動面で微細な凸部同士が接触すると、接触面積が小さいので衝突させら れる圧力が巨大となり凸部同士が融けて溶接されます。
 この現象を凝着と呼びます。


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