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ドライヴィング理論
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【問】 ドライヴィングテクニックの本を読んでいると、「ヒール アンド トゥを完璧にこなせた場合、フット
ブレーキにエンジンブレーキが加わるので制動距離が短くなる」と書いてありました。
しかし、他のページには「タイヤが同じなら、ブレーキが大きくなっても制動距離は縮まらない」とも書
いてあります。
フットブレーキにエンジンブレーキが加わるのは、ブレーキが大きくなるのと同じ事ではないでしょう
か。
矛盾していると思うのですが・・・
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【答】 矛盾していますね。
まず、「タイヤが同じなら、ブレーキが大きくなっても制動距離は縮まらない」って話の理屈から考えて
みましょう。
クルマが減速する要素は2つに大別できると思います。
ひとつは、タイヤと路面の摩擦抵抗。
もうひとつは、ブレーキローターとブレーキパッドとの摩擦や、エンジン/トランスミッション/デフなど
の抵抗・・・つまり車輪軸に掛かる抵抗です。
(更に空気抵抗がありますが、ここでは割愛します)
制動とは、まずタイヤと路面の摩擦抵抗(=摩擦に因って生じる発熱)が必須です。
これに車輪軸に掛かる抵抗(=摩擦に因る発熱と機械的損失)が加わってクルマの運動エネルギー
が熱変換され、速度が落ちるのです。
ということは、最も効率の良い制動とは、「タイヤと路面の摩擦抵抗」と、「車輪軸に掛かる抵抗」の
『合計』が最大だということです。
それはつまり、車輪軸に掛かる抵抗の中身がフットブレーキの発熱に因る物であるのか、エンジンな
どの機械的損失に因る物であるのかに拘わりません。
最も効率良く発熱するタイヤと路面の速度差があって、その速度に車輪軸の回転を抑える為にフット
ブレーキの発熱と、エンジンなどの機械的損失が働くのです。
もし、エンジンなどの機械的損失が加わらない状態で、フットブレーキに因ってタイヤと路面が最も効
率良く発熱する速度差になっていたとしましょう。
ここにエンジンなどの機械的損失が加わった場合、
[ フットブレーキ ] + [ エンジンなど機械的損失 ] > [ フットブレーキ ]
となるので、車輪軸に掛かる抵抗は大きくなります。
しかし、車輪軸に掛かる抵抗が大きくなると、タイヤと路面との速度差が大きくなってしまうので、タイ
ヤと路面が摩擦して発生する熱量が最高の効率状態から外れて、低下します。
「タイヤと路面が摩擦して発生する熱量が落ちる = タイヤと路面の摩擦抵抗が下がる」
ですから、大きな抵抗が掛かっている車輪軸は、あっと言う間に回転を停止してしまうでしょう。
車輪軸が停止すると [ フットブレーキ ] + [ エンジンなど機械的損失 ] がゼロになってしまいますか
ら、結局のところ、フットブレーキの摩擦抵抗を下げ、
[ 弱いフットブレーキ ] + [ エンジンなど機械的損失 ] = [ 強いフットブレーキ ]
にしてバランスを取らざるを得ません。
ですから、強いフットブレーキで、タイヤと路面が摩擦して発生する熱量を最大に出来ているのであれ
ば、エンジンブレーキを掛けてもフットブレーキを緩めて調整せざるを得ず、制動距離は短くならないの
です。
これは、ブレーキシステムを大きくした場合も同様です。
小さいブレーキでも、タイヤと路面が摩擦して発生する熱量を最大に出来ているのであれば、大きい
ブレーキの強い制動力は、タイヤと路面が摩擦して発生する熱量を最大に出来なくなってしまいます。
結果、大きいブレーキシステムでも制動力を控えざるを得ず、小さいブレーキの時と最短制動距離は
変わらなくなってしまうのです。
・・・と、まぁ、ここまでは4つのタイヤを一纏めにして考証した場合の話です。
実際のクルマのフットブレーキは、ひとつのペダルで4輪のブレーキを操作しているので、最もロック
し易い1輪に合わせて他の3輪の制動力を調整せざるを得ません(ABS付きのクルマの話は別項にて
→工事中)。
高速域からブレーキペダルを踏み締めた際に、エンジンブレーキが掛からない状態で、前後輪が同
時にロックするように設計されていると仮定しましょう。
このクルマでブレーキペダルを踏み締めつつエンジンブレーキを併用した場合、駆動輪が非駆動輪
よりも先にロックしてしまいます。
そうなると、フットブレーキのコントロールはロックし易い駆動輪に合われざるを得ません。
その結果、非駆動輪の制動力が落ちてしまうので、最短制動距離が延びてしまうのです。
ただし、フットブレーキにエンジンブレーキを組み合わせる事に因り、制動距離が短くなる場合があり
ます。
というのも、市販車の多くは、ブレーキ油圧の配管に「Pバルブ」というバルブを使って急制動時にリア
のブレーキ油圧を下げています。
何故なら急制動時にリアブレーキが効きすぎると、リアタイヤがロックして危険だからです。
このシステムが完璧に機能しているならば、制動Gに拘わらず、フル制動すれば前後輪が同時にロッ
クするブレーキバランスが確保できる筈です。
しかし、現実はそうではありません。
Pバルブはフル制動時に、前輪が後輪よりも早くロックするように油圧を調整する様に設計されてい
ます。
なぜなら、後輪のロックは容易にクルマをスピンさせるので、一般的な運転技術のドライバーにとっ
て、後輪の早期ロックは危険だからです。
この様なクルマをフットブレーキだけで制動した場合、前述の「エンジンブレーキが掛からない状態
で、前後輪が同時にロックするように設計されているクルマ」と比較して、エンジンブレーキが掛からな
い状態での最短制動距離が長くなってしまいます。
この様なクルマに於いて、後輪にエンジンブレーキが掛かるのであれば、エンジンブレーキを併用す
ることで制動力の甘い後輪に制動力を追加する事が可能になります。
そういう前提に限り、2輪駆動車の場合で、エンジンブレーキの併用が最短制動距離の短縮になりま
す。
ですから、Pバルブ付きフットブレーキの後輪駆動車に限り、ヒール アンド トゥを完璧にこなすと制
動距離が短くなります。
まぁ、理屈上の話ですけど(笑)。
★★★★★☆☆☆☆☆★★★★★☆☆☆☆☆★★★★★☆☆☆☆☆
さて、上述の理屈に関してお便りを頂戴しました。
頂戴したのは、随分以前なのですが、日々の忙しさにかまけて忘れていたのです。 今更返信する
のも何ですので、この場をお借りして返答させて頂きます。
「いつも楽しく拝見させて頂いております。
質問がございます。
ドライヴィング理論
エンジンブレーキで制動距離は縮まるのか?
にて、結論が
Pバルブ付きフットブレーキの後輪駆動車に限り、ヒール アンド トゥを
完璧にこなすと制動距離が短くなります」
となっている部分です。
ABSは無いものと仮定します。
実際にやってみると、FF車はエンブレを使うとかなり制動距離を短くできると思います。 それはエ
ンブレは単なるディスクブレーキやドラムブレーキと違い、ブレーキの際にエンジンによる慣性が得られ
るからだと思われます。
この慣性より、例えばブレーキング中にタイヤが僅かなギャップを拾い、それによりタイヤがロックして
しまう、ということを大幅に防ぐことができます。
(一度でもロックしてしまうと静止摩擦係数>動摩擦係数の関係よりロック解除にロスが生じます。)
理想的な条件下ではエンブレの効能は得られませんが、事実上、スポーツ走行に於いてはエンブレの
効能はかなり大きいです。
もちろん、エンジンの慣性のお陰で強い減速度をかけた際にタイヤがロックしにくくなるという特性は後
輪駆動よりもFFの方が大きいです。(ブレーキングは主に前輪で行うから)
教習所のパニックブレーキの教程ですら、エンストするまでクラッチを繋いだままブレーキを踏んでいた
記憶が御座います。
―<中略>― その点に全く触れられていないのは大変残念に思いました。」
・・・ちょっと誤解があるようですね。
この慣性より、例えばブレーキング中にタイヤが僅かなギャップを拾い、それによりタイヤがロックし
てしまう、ということを大幅に防ぐことができます。
この部分が意図するのは、「原動機や伝達系、車輪などの回転体が持つ慣性力が抵抗となって抗ロッ
ク性が向上する(=ブレーキロックし難くなる)」という意味ですよね。 これは、エンブレ(=エンジンブ
レーキ)ではありません。
エンジンブレーキは、その名の通り、原動機のモータリング抵抗(※)に因って車速が落ちる現象で
す。
※訳注「モータリング抵抗」:原動機が外部からの入力に因って強制的に回される際に生じる抵抗のこと。 抵抗の要素は、摩
擦損失や圧縮行程のポンピング損失など。
上述の繰り返しになりますが、『エンジンなどの機械的損失が加わらない状態で、フット
ブレーキのみに因り、タイヤと路面が最も効率良く発熱する速度差になっている』と
いう前提条件に立ち、なおかつ、『その制動においてフェードが発生しない』のであれば、エ
ンジンブレーキの有無は制動距離に影響しません。
フットブレーキの制動力にエンジンブレーキが加わって制動距離が縮まるためには、フットブレーキの
みの制動において、駆動輪の制動力(= [ ブレーキシステムに於ける運動エネルギーの熱変換量 ]
+ [ タイヤに於ける損失 ] )が非駆動輪よりも小さい場合に限られます。
具体的に言えば、走行中にクラッチを切っている、あるいは、ギアがニュートラルに入った状態からガ
ツンとブレーキペダルを蹴った時に、非駆動輪が先にロックしてしまうのであれば、エンジンブレーキを
併用することによって絶対的な制動距離が縮むのです。 しかし、これは、「エンジンなどの機械的損
失が加わらない状態で、フットブレーキに因ってタイヤと路面が最も効率良く発熱する速度差になって
いる状態」ではありません。
さて、では、「エンジンなど、回転する質量の慣性エネルギーによって、車輪の抗ロック性が向上す
る」という意見についてはどうでしょうか?
この着眼点は非常に素晴らしいと思います。
ソレっぽく書かれた理論を鵜呑みにしないで、こうした発想が出来る人はそう多く居ません。
しかし、だからといって、その発想が正鵠を射ているかどうかは別問題です。
原動機や駆動力伝達系、車輪などの回転体が持つ慣性エネルギーがタイヤの抗ロック性を向上させ
ている状態とは、彼自身が書いている通り、ブレーキング中にタイヤが僅かなギャップを拾ってタイヤ
の接地状況が悪化した状態においても、タイヤがロックしない状態です。
それは、アンチロックではなく、[ 車体の慣性エネルギー ] + [ 回転体が持つ慣性エネルギー ] > [
ブレーキシステムの制動力(車輪の回転を止めようとする力)] という状態でしかありません。
ここまでの説明で既にお気付きの貴兄も多いかと存じますが、逆の見方をすれば、回転体が持つ慣
性エネルギーの負荷増がなくても、ブレーキが貧弱であれば[ 車体の慣性エネルギー ] > [ ブレーキ
システムの制動力(車輪の回転を止めようとする力)] という不等式が成り立って抗ロック性が向上しま
す。
つまり、原動機や駆動力伝達系、車輪などの回転を“弾み車”として捉えるのであれば、エンジンなど
の慣性力が制動距離を縮める道理は成り立たないのです。
さて、ここまでの説明で「弾み車は、制動距離を縮めない」と結論付けましたが、実は、それ以前の問
題で、原動機は弾み車になりません。
そもそも、混合気を点火し膨張圧力を得るという稼動を断たれた慣性回転物が、クルマの制動時間
よりも長い時間、惰性で回転し続けない限り、原動機内の回転物を“弾み車”と見做すことは出来ませ
ん。 ところが、ギアをニュートラルにしてスロットルを閉じ、エンジンキーをOFFにすれば、クランクシ
ャフトは直ちに回転を停止してしまいます。 つまり、[ クルマが停止するまでに掛かる制動時間 ] >
[ 原動機内の回転物が惰性で回り続ける時間 ] なのです。 実際に“弾み車”に相当する回転物はエ
ンジン内だけではなく、伝達系や車輪などの回転体も含みますが、それらは、エンジンブレーキを掛け
る掛けないに関係なく回転運動しているものです。
つまり、原動機内の回転物は、制動に抗する“弾み車”には成り得ず、その損失(惰性回転が喪失す
る原因となる損失=摩擦やポンピングロスなど)によってエンジンブレーキとして機能しているだけなの
です。
なお、余談ではありますが、教習所のパニックブレーキの教程ですら、エンストするまでクラッチを繋
いだままブレーキを踏むように指導されるのは、
(1)エンジンブレーキを併用するため
(2)エンジンの負圧がブレーキブースターへ利用されることによって、燃調が狂ってエンストする虞があ
ります。 万一エンストしてしまうとパワーステアリングが効かなくなって操舵に激強い腕力を要求され
るようになります。 これによって、以降の回避操作が困難になり二次被害を生む可能性が高くなりま
す。
(3)パニック時に要求される動作は、可能な限り単純でなければならない。
・・・という理由からです。
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