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ドライヴィング理論

 ロングホイールベース VS ショートホイールベース
【問】 ロングホイールベースの方が、ショートホイールベースに比べて
回頭性に劣ると聞きました。
 本当ですか?
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【答】 本当です。
 「回頭性」を、極低速での最小旋回円半径の大きさの意味だとしても YES 、高速で強アンダーステア 特性を示す意味だとしても YES です。
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 ・
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 っ
 て
 自
 信
 マ
 ン
 マ
 ン
 に
 書
 い
 ち
 ゃ
 っ
 た
 の
 で
 す
 が
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 え〜毎度お馴染みの流れで御座いますが、思い付きで文章を校正したら思いっ切り突っ込まれてし まいました(怒濤の滝汗)。
 いつもなら、「○○さんにご指摘を頂戴しましたので〜」と云う侘び分を書き出しに添えることで誤魔化 すところなのですが、ちょっと構成で誤魔化し切れないチョンボですので、腹括って正直に詫びさせて頂 くことにしました。

 以下、私が意気揚々として書いた出鱈目な記述です。
 判り易くするため、緑色に着色しました。

 「『回頭性』を、極低速での最小旋回円半径の大きさの意味だとしても YES 、高速で強アンダーステ ア特性を示す意味だとしても YES です。

 前者の意味の場合、前輪の中心を通る線と、後ろ左右輪の中心を通る線の交点から、車体の一番 遠い箇所までの距離が、旋回半径になります(極低速なので横滑り角を無視しています)。
 図を描けば一目瞭然(面倒臭いので描きませんが)、極低速の最小旋回円半径はロングホイールベース の方が、ショートホイールベースに比べて大きくなります。

 一方、後者の意味の場合、ロングホイールベースはショートホイールベースに比べ、(前輪の横滑り 角が同じでも)後輪の横滑り角が大きくなるため、後輪の求心力が強くなり易くアンダーステア傾向に 拍車が掛かります。
 言葉だけで説明しようとすると工学書の数式みたいになっちゃいますので、図解しました。
 
 青い線が前2輪の軌跡に対する接線。 赤い線が後2輪の軌跡に対する接線です。

 同じ図をショートホイールベースについて描くと
 
 となります。

 並べると、こう。
  

 タイヤの横滑り角は、軌跡の接線に対する角度ですから、赤い線に対する後輪の角度(=横滑り角) が大きい方が後輪の求心力が強い、すなわち、ロングホイールベースの方がアンダーステア傾向が強 くなるので、回答性に劣ると言えるワケです。

・・・さてさて。
 どこが出鱈目なのでしょうか?



 冷静になって(=アルコールが抜けた状態で)考えれば、上述のような発想をすること自体が異常だ と思うのですが、書いている最中は気が付かないんですよ。



 まぁ、単純な話、私がアフォなだけなのですが…



 以下は、このサイトの影の師範代でもある“かめ”様からの鋭過ぎる突っ込みです。
 判り易くするため、“かめ”様から御指摘頂いた部分を水色にしました。

「回頭性」を、極低速での最小旋回円半径の大きさの意味だとしても YES 、

ですね。

高速で強アンダーステア 特性を示す意味だとしても YES です。

うーん、そうでしょうか。
 僕は昔から、回頭性が「ロングホイールベース<ショートホイールベース」とは思っていませんでした。
 他の条件が同じならば(スイッチ一つでホイールベースを変えられる車両とか)、ロング優位だと思っ ています。
 理由は、単純に車のどこに力が作用するかです。
 端を押すほうが小さな力で向きを変えられるという理由です。
 つまり素早い回頭が可能。
 現実の車では、ホイールベースが違う=全長が違うということもあり、結果的にロングホイールベース というのは、より長いものを回転させるということになってしまいます。
 したがってロング優位にはならないことが多い。
 つまり、本当に違うのは全長であり、回頭性は「長い全長<短い全長」だと思います。
 問題はホイールベースではないところにあると思います。
 圭坊さんの図は言いたいことはわかります。
 しかし、これは前輪の舵角を両者同じにしていますよね? 意味のある比較とは思えません。
 これでは、旋回しようとしている円の大きさが最初から違っています。
 これでは前輪が基準ならば後輪の横滑り角が大きくなり、後輪基準ならば前輪のそれが小さくなるの は当然です。
・・・おっしゃる通りでございます。
 「アンダーステアなのかオーバーステアなのか?」、すなわち、「前輪の舵角を足さなければ旋回 できないのか戻さなければ旋回できないのか?」を比較しようとしているのに、前輪の舵角を両者同 じにして、後輪の横滑り角を比べても意味がありませんね。

 なんで、こんな迂闊なことをしてしまったかを述べると、うろ覚えなのですが、随分以前に雑誌の4WS 特集で、「4WSにおける後輪の同相操舵は、見掛け上のロングホイールベース化として効果を発揮す る」という記述がありまして、その時に添付されていた図がコレだったんですよ(まぁ、うろ覚えなんです が)。
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 で
 ・
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 ・
 『スピンモードへ移行し難くするために4WSを同相操舵する』ということは、
   …『見掛け上ロングホイールベース化にするとスピンモードへ移行し難くなる』
    …という意味に置き換えることが出来ると考えたワケです。
 一方、『スピンモードへ移行し難い≒強いアンダーステア傾向』ということですから、
   …『ロングホイールベースにするとアンダーステア傾向が強くなり、ショートホイールベースにすると アンダーステア傾向が弱くなる』と置き換えることが出来るワケですから、
    …『ロングホイールベースにすると回頭性が下がる vs ショートホイールベースにすると回頭性が 上がる』が成立すると考えてしまったワケです。
 しかし、よく考えてみれば、『見掛け上ロングホイールベース化する』と『実車をロングホイールベ ース化する』は同義ではありませんよね(滝汗)。

 同じ車体(質量マス)に対してロングホイールベースであったりショートホイールベースであったりする ということは、車体の長さが同じままでオーバーハングが短かったり長かったりするのであって、オーバ ーハングが同じままで車体全長が長かったり短かったりするワケではありません。

 「車体の長さが同じままでオーバーハングが短かったり長かったりする」場合のショートホイールベー スを図示すれば、こうなるでしょう。
 

 いうまでもなく、先程の
  VS 
 とは別物です(汗)。

 4WSの同相操舵は、あくまで「見掛け上」の話であって、実際に車体を伸ばしているわけではありませ ん。
 しかも、クルマを回頭させようとする力、すなわちヨーモーメントは、重心に作用する慣性力と前後輪 の求心力に因って発生しています。
 ホイールベースが異なった場合、それぞれのタイヤは異なった場所でそれぞれの求心力を発生する ことになりますが、その作用点と重心までの距離が同じであり、なおかつ、4輪の求心力の総和が変わ らないのであれば、発生するヨーモーメントは同じになってしまいます。



僕の書いた図(左回り)を見てください。
 
 圭坊さんなら見るまでもないと思いますが同じ円を描くときの前輪舵角はロングのほうが大きくなりま すよね。
 (左回りの図・全輪同じ横滑り角・右端の太いオレンジ線が後輪の向き(赤線は接線)・左端の線がロ ングの前輪の向き・真ん中がショートの前輪の向き)
 これが同じ円を描くときの車両に見合った舵角ですから、こういう状態で比較すべきだと思います。
・・・そうですね。
 
 かめ様の御指摘通り、前輪の横滑り角を得るためには後輪の横滑り角が同じでも、ロングボデイの 方がショートボデイよりも要求される転舵量が大きくなる(=ハンドルを沢山切らなくてはならない)とい うことが分かります。

 つまり、ロングホイールベースとショートホイールベースの違いが、(少なくとも重心位置の違いを規定 しない限り)単に「要求される横滑り角を得るために必要な操舵量が違う」ということでしかないのです。



普通、前輪の舵角は運転者に確認されるわけではなく、これだけハンドルを切ったらこれだけ曲がる という感覚が基準で、ある大きさの旋回をするとき、ロングの車とショートの車では当然前輪舵角の差 は自然に生まれています。同じ旋回円を期待してハンドルを切れば、その操作は車両に見合った前輪 舵角を生んでいるわけです。
横滑り角云々の問題は起きず、タイヤの条件は同じだと思います。
単純にロングのほうが前輪舵角の限界が早く来ますが、それが最小回転半径を決定するだけだと思 います。
(ハンドルの操作量に対する回頭性は「ステアリングギヤ比小=優秀」となってしまうので意味なしで す。当たり前ですね。)
・・・要求される転舵量の多いvs少ないを以って、アンダーステアであるvsないと見做してはイケナイとい うことですね。



僕は、昔から『ショートホイールベースは回頭性に優れる』という表現を『ショートに設計する=車体を 短く設計する』の意味だと理解してきました。
 もし車輪位置だけを前後で寄せるなどの変更でショート化したら、回頭性は悪くなるだけだと思いま す。
 現行セリカのロングホイールベース化の理由も回頭性アップとのことで僕の考えと一致しています。
・・・おっしゃる通りです。
 CR-Xや(最近(平成17年年末〜18年年始)の湾岸ミッドナイトで称えられている)旧式の空冷ポルシェなどが、僅かな エンジンブレーキに対して敏感に向きを変えるのは、重心高さに対するホイールベースの短さ故に、同 じ減速Gでも荷重移動量が大となるからであって、ショートホイールベースであるが故に前後輪の横滑 り角に角度差が生じているからではありません。
 昔のフェアレィディZなどのようなロングボディ&ショートホイールベースは、回頭性の向上を狙ったも のではなく、むしろ逆にヨー角運動に対する慣性マスの大きさ故に、前後の求心力に差が生じても急激 に回頭しないようにするための設計であると思われます。

ティラノサウルス(恐竜)は頭から尻尾まで前後に長く、走る速度は遅くないものの回頭性に劣るため 小型の獲物に右に左に逃げられていただろうとのことです(笑)。
・・・納得です。
 頭を上げて走る時はショートボディですが、獲物に噛み付こうと頭を下げるとロングボディになってしま うのですね。 う〜ん、獲物に追い付くことは出来るけど、食い付くことが出来ないティラノザウルスか… なんか、哀れです。

もちろん「回頭性」は、素早く向きを変える(自転)という意味で捉えています。
いかがでしょうか。
・・・「いかが」も何も完敗です。
 う〜ん、これじゃ只今草稿を書いている最中の「タックイン」ネタも、突っ込み箇所満載のズタボロな仕 上がりになりそうな予感…だめぽ






 なお、この続きの部分に関しては、“かめ”様からも特にお咎めは無いようです。

 「しかも、同じ重心高さのクルマであれば、同じだけ水平方向に前後Gを受けた際の荷重移動量はホ イールベースの長さに反比例します。  水平方向のGはタイヤの摩擦損失に因って発生するのですか ら、短いホイールベースのクルマは、タイヤのグリップ限界を超えない範囲で大きな前後求心力差(= ヨーモーメント)を発生させることが出来ます(※)。  この点もまた、ショートホイールベースが高いヨー ゲインを容易く得る要因となっており、「ショートホイールベースの方が回頭性に優れる(=ロングホイー ルベースの方が回頭性に劣る)」と言われる所以なのです。
 ただし、ショートホイールベースの回頭性の良さは、スピンモードへの移行し易さと同義ですから、ショ ートホイールベースのクルマは挙動がナーバスです。
 例えばCR−]は、おっかないクルマでしたからね。
 強い横Gを受けた旋回中に、アクセルを急閉しただけでいきなりスピンしましたよ。



★注※:もう少し詳しく解説しますと・・・

 たとえば、車両重量1200kg、重心点高さ0.5メートル、ホイールベース4メートルのクルマが0.5Gで制動状態にある時、
 [ 制動力 ] = 1200(kg) × 0.5(G)
 したがって、
 [ ピッチモーメント ] = 600(kg) × 0.5(m) = 300(kg・m)
 この時、
 [ 荷重移動 ] = 300(kg・m) ÷ 4(m) ≒ 75(kg)

 一方、 同じ条件でホイールベースが3.5メートルのクルマなら、
 [ 制動力 ] = 1200(kg) × 0.5(G)
 [ ピッチモーメント ] = 600(kg) × 0.5(m) = 300(kg・m)
 [ 荷重移動 ] = 300(kg・m) ÷ 3.5(m) ≒ 85.7(kg)

 そして、この時、0.5Gの制動力を発生するために費やされた縦方向のグリップ力はどちらも同じです。  つまり、ホイールベ ースの短いクルマの方が、同じ制動G(縦方向のG)でも大きく荷重移動するため、回頭し易くなるのです。



■□2007.11.18 追加記事□■

 さて、ロングホイールベース vs ショートホイールベースの比較でロングホイールベースの優位性が分 かったのですが、見方を変えるとロングホイールベースとシュートホイールベースはタックインという現 象の起こり易さに違いがあることが分かります。

 ドライビング理論の目次(http://cabad806.web.infoseek.co.jp/page224.html)から拙稿【(12) タックイ ンについて (FFはリアが軽くてスピンし易い?)】を御覧頂ければお解りの通り、タックインという現象 は、車体の横滑り角によって生じます(FF車の場合、重心の慣性方向が前輪軸中心よりもIN側を向い ている時にエンジンブレーキが掛かるとタックインが発生)。
 ということは、同じ旋回状態でも車体の横滑り角が小さければ、タックインは起こり難いことになりま す。

 そこで同じ旋回状態をロングホイールベースとショートホイールベースで比べてみましょう。

 

 時計方向に旋回しているショートホイールベース車輌をその状態のまま、クルマをロングホイールベ ース化(前後輪とも重心からの距離を2倍)すると、フロントタイヤの横滑り角が減って、リアタイヤの横 滑り角が増えます。
 図ではロングホイールベース化に依って、 [ フロントタイヤの横滑り角 ] < [ リアタイヤの横滑り角 ]  となっており、このままでは反時計方向にヨー角運動してしまい、時計方向の旋回が成立しません。

 そこで、フロントタイヤとリアタイヤの横滑り角の関係をショートホイールベース時に近くしてやりましょ う。
 そうすると・・・

 

 ↑こうなります。

 ドライバーから見た旋回中心は後方へ移動し、重心の慣性方向と車体の横滑り角がほぼ同じ方向を 向いています(厳密には、重心の慣性方向が前輪軸中心よりも僅かにOUT側を向いている)。
 ここから前輪に強いエンジンブレーキを掛けても、エンジンブレーキと慣性重量の間にヨー角運動を 加速させる力は働きません。

 つまり、FF車のアンダーステア対策として、ロングホイールベース化が極めて有効な設計手段なので す。
 (ロングホイールベース化に伴って荷重移動量が減少するので尚更です)


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