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ドライヴィング理論

 (01) アンダーステアって? (オーバーステアって?)
2005.10.30 かめ様より「ヨー角速度に関する記述に間違いがある」というご指摘を頂戴しましたので、その部分を改稿しまし た。
【問】 アンダーステアってなんですか?
 (オーバーステアってなんですか?)

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【答】 アンダーステア?
オーバーステア?
ニュートラルステア?

 自動車雑誌を読んで一番初めにに疑問に思うのは、この三つの単語の意味でしょう。
 比較的低年齢層(といっても、免許取得年齢以上)向けの自動車雑誌などでは、特集を組んで用語 解説をしてくれたりするのですが、これが殆どの場合、間違っています。

 というか、モータースポーツにおいて使われる場合は、本来の意味と全く違う使われ方をしています。
 “アンダーステア”、“オーバーステア”、“ニュートラルステア”という用語の本来の意味は、
 「限界速度よりも遥かに遅い速度で)定常円旋回している車両が(駆動力に因る横力の減少を考慮しない で済む程度)緩やかに増速した場合において、
 (1)クルマの軌跡が、それまでの旋回円の外側へ膨らんでいく現象を“アンダーステア”
 (2)クルマの軌跡が、それまでの旋回円の内側へ縮んでいく現象を“オーバーステア”
 (3)クルマの軌跡が、それまでの旋回円をトレースする現象を“ニュートラルステア”
 …と称する
 のです。
 敢えて「限界速度よりも遥かに遅い速度で」と但し書きしたのには、理由があります。
 当然のことながら、限界速度で円旋回している車両が増速すれば速度が限界を超えます。
 限界を超えた速度で走るクルマの軌跡が、それまでの旋回円上を描くことはできません。
 モチロン、それまでの旋回円の内側に入ることも在り得ません。

 したがって、モータスポーツ用語としてクルマの限界特性を語る時に“アンダーステア”、“オーバース テア”、“ニュートラルステア”を用いるためには、解釈を若干変更する必要があります。

 その解釈が適切であれば、“アンダーステア”、“オーバーステア”、“ニュートラルステア”をモータース ポーツ用語として使うことに問題はありません(自動車工学の専門家には怒られてしまうでしょうが)。

 問題になってしまうのは、自動車雑誌やweb上で用いられる“アンダーステア”、“オーバーステア”、 “ニュートラルステア”の解釈が、
 「アンダーステア=曲がらない。 オーバーステア=曲がりすぎ。 ニュートラルステア=丁度良い
 になってることです。

 この解釈には根本的な問題があります。

 モータースポーツの世界で曲がりすぎという現象は基本的に在り得ません。
 なぜなら、限界速度で曲がっているクルマの旋回円半径が、速度を落とさずに小さくなるということは 物理に反するからです。
 中学校で学んだ通り、
 [遠心力]=[質量]×[速度]の2乗÷[半径]
 です。
 速度を落とさずに半径が小さくなれば、遠心力が増大します。
 タイヤが限界まで踏ん張っている状態から、更に増大する遠心力に耐えることはできません。

 ただし、限界を超えれば、タイヤはズバァ〜ッ!と滑ってしまいます。 この滑りによって大きな摩擦 熱が生じると、摩擦熱が慣性運動エネルギーを奪って速度が落ちます。  速度が遅くなれば、小さな 半径でも曲がることが出来るようになります。
 つまり、曲がりすぎとは単に減速して曲がっただけでしかなく、モータースポーツの用語として不適切 と言わざるを得ません。



 では、そもそも『曲がる』とは、どういう現象なのでしょうか。
 小難しい自動車雑誌などに目を通すことのない一般ドライバーの大半は、クルマとはハンドルを回せ ば曲がるものと考えています。
 しかし、物事はそれ程単純ではありません。

 概念をご理解頂く為に、定常円旋回を例に挙げて考察してみましょう。
 定常円旋回とは、一定の半径の円周上を、円周から付かず離れずして走り続けることをいいます。
 ここに一台のクルマが用意されているとします。
 そのクルマで定常円旋回をしてみましょう。
 クルマの速度がほぼ限界に達している状態から緩やかに加速すればどうなるでしょうか?
 必ずや旋回半径は大きくなって、周回円の外側を走ろうとしてしまうはずです。
 これは何故かというと、速度が速くなることによってクルマに作用する遠心力が大きくなり、タイヤのグ リップ力に打ち勝ってクルマを外へ押し出すからです。
 この時、前輪が後輪よりも早期に押し出されてしまう現象を『アンダーステア』と称することにします。
 そうすると、前輪も後輪も同時に押し出されてしまう現象を『ニュートラルステア』、
 後輪が前輪よりも早期に押し出されてしまってスピンモードに入ろうとする現象を『オーバーステア』と 称することができます。
 「それは勝手な定義だ」と言われればそれまでですが、限界特性について語る時に使用するモーター スポーツ用語としては、こう定義せざるを得ないのです。

 では、これら○○○ステアという現象は何によってもたらされるのでしょうか?
 車体剛性や重量物の搭載高さ、サスペンションの構造・アライメント変化、等々さまざまな要因があり ますが、(前後タイヤのバランスが適切ならば)もっとも影響力が大きいのは前後の重量バランスです。
 静止状態または定速で直進中のクルマのタイヤは、4輪それぞれがクルマの重量を分散して負担し ています。
 その中でも、前輪2輪と後輪2輪は、それぞれが前後の重量配分に応じて重量を負担しているという 点で、グループ分けが出来るでしょう。
 旋回中のクルマを観察すると、前輪2輪は前輪軸重に掛かる遠心力に耐え、後輪2輪は後輪軸重に 掛かる遠心力に耐えています。
 前輪軸重の方が後輪軸重よりも重いクルマはアンダーステア特性になり、
 後輪軸重の方が前輪軸重よりも重いクルマはオーバーステア特性になります。
 前輪軸重と後輪軸重が同じ重さならニュートラルステア特性になるわけです。

 速度を上げていくことによって、アンダーステアとなったクルマのドライバーは、ハンドルの操舵角を大 きくして周回円上に留まることが出来ます。
 これは、より大きくハンドルを回すことにより、フロントタイヤの旋回能力を引き出して、前輪に掛か遠 心力に拮抗させることです。
 しかし、あまりにも速度が速くなりすぎていた場合、前輪のタイヤの限界に達してしまうことがありま す。
 この場合、もはやそれ以上に前輪の旋回能力を高めることは出来ませんので、ハンドルの操舵角を 今まで以上に大きくしても、周回円上に留まることは出来なくなります。

 速度を上げていくことによって、ニュートラルステアのまま旋回軌跡が周回円の外へ孕んでしまったク ルマは、ハンドルの操舵角を大きくしても、周回円上に戻ることは出来ません。
 なぜなら、そのような状態のクルマが描く軌跡は周回円の外側を回る円だからです。
 その速度では周回円のような小さな円を描くことが出来ないのですね。
 しかし、タイヤのグリップ力が遠心力に負けて外へ押し出された場合、タイヤは横滑りを起こしていま す。
 横滑りを起こしたタイヤは路面と摺動し摩擦熱を発生させます。
 この摩擦熱によってクルマの運動エネルギーは消費され、クルマは速度を落とすのです。
 速度が低下すれば、クルマに掛かる遠心力も小さくなりますから、再び周回円に戻ることができるよう になります。

 速度を上げていくことによって、オーバーステアとなったクルマは、ハンドルの操舵角を小さくしても周 回円上に留まることが出来ません。
 これは、オーバーステアという現象によって、後輪が進行方向に対して大きな角度を持ってしまうから です。
 後輪が外側に押し出されて、車体そのものの進行方向に対する角度が大きくなると、前輪の舵角も 相対的に大きくなるわけですから、それ以上に転舵することは意味を成しません。
 むしろ、前輪だけで言えば、ハンドルの回す量を減らして、進行方向に対するタイヤの角度を戻して やらなくてはならないのです。
 しかし、ここで面白い現象が起こります。
 タイヤのグリップ力が遠心力に負けて外へ押し出された場合、タイヤは横滑りを起こします。
 横滑りを起こしたタイヤは路面と摺動し摩擦熱を発生させます。
 この摩擦熱によってクルマの運動エネルギーは消費され、クルマは速度を落とすのです。
 速度が低下すれば、クルマに掛かる遠心力も小さくなりますから、この時点でクルマの進行方向は周 回円の内側を向いており、小さくなった遠心力よりも相対的に強くなったグリップ力の力で、クルマは小 さく旋回しようとします。
 これが『巻き込み』という現象です。
 注意して欲しいのは、スピンモード=巻き込み、では無い、ということです。
 これが理解出来ていないと、某雑誌のドラテク特集のように、「コーナーを曲がりきれないときは、オ ーバーステアにすれば、イン側に巻き込んで曲がることができる」などという突拍子もない表現が出てし まうのです。
 イン側に巻き込むのは、横滑りしたタイヤの摩擦熱で速度が落ちた結果なのです。
 異常な速度で急カーブに進入した場合、オーバーステアからスピンしても結果はコースアウトにしかな りません。
 横滑りによって生じた摩擦熱だけでは異常な速度を相殺出来ませんからね。

  


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