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ドライヴィング理論
(02) オーバーステアって、「ケツを振ったらイン側へ巻き込んだ」のではないの?
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2005.10.30 かめ様より「ヨー角速度に関する記述に間違いがある」というご指摘を頂戴しましたので、その部分を改稿しまし
た。
【問】オーバーステアって、「ケツを振ったらイン側へ巻き込んだ」のではないの?
★★★★★☆☆☆☆☆★★★★★☆☆☆☆☆★★★★★☆☆☆☆☆
【答】オーバーステアに関する誤解で多いのは、「オーバーステア=曲がりすぎる」という理解でしょう。
再確認しておきたいのですが、アンダーステア/オーバーステアとは、
「(限界速度よりも遥かに遅い速度で)一定の舵角を維持して円旋回している車両を仮定します。 そ
の車両が増速した際に、
(1)前輪の求心力が不足して、軌跡がそれまでの旋回円の外側へ膨らむのがアンダーステア。
(2)逆に前輪の求心力が過剰となって、軌跡が旋回円が定常円よりも小さくなるのがオーバーステ
ア。」
…と定義されています。
ここで我々は大切なことに気付かなければなりません。
速度が限界に近いほど速かったらどうなるのか?と。
ほぼ限界の速度で円旋回するクルマが増速した場合、限界の速度を超えてしまうのですから同じ円
周上に留まることはできません。 定義を読めば判る通り、定義文の何処にも「オーバースピードでコ
ーナーに進入した時に」とは書いていません。
つまり、定義に対して厳格に従うのであれば、アンダーステア/ニュートラルステア/オーバーステア
は、曲がろうとした時に生じる挙動を示す用語でもなければ、限界特性を表す用語でもないのです。
定義に対して厳格に従うのであれば、アンダーステア/ニュートラルステア/オーバーステアとは、
「限界速度よりも遥かに遅い速度での円旋回から緩やかに加速したら軌跡はどうなるか」以外の意味
を持ちません。
ですから、我々がコーナーを攻めていた時に生じる「曲がりきれなくてコースアウト」や、「ケツ振ってス
ピン」という現象は、定義に対して厳格に従うのであれば、アンダーステア/オーバーステアではありま
せん。
なぜなら、コーナーを攻めるという行為は、クルマの限界に近い領域における運転だからです。
ということは、定義に対して厳格に従ってしまうと、アンダーステア/オーバーステアという用語をモー
タースポーツに適用することはできません(実際、ちゃんとした本では限界特性の説明にアンダーステア/オーバー
ステアという用語を使っていません)。
逆に言えば、「曲がりきれなくてコースアウト」や、「ケツ振ってスピン」という現象を解説するのに適切
な言葉が無くなってしまうのです(ホント言うと前者は「ドリフトアウト」後者は「スピンモード」でイイんだけどね)。
「いや、『曲がりきれなくてコースアウトするのがアンダーステア』、『ケツを振ったらイン側へ巻き込ん
だのがオーバーステア』でしょ?」と返されるかも知れませんが、ケツを振ったらイン側へ巻き込んだと
いう現象自体が、低速でしか起こり得ない現象です。
雨の日に峠を攻めたことがあれば、誰もが体験していることですが、「テールスライド=必ずインへ巻
き込む」ではありません。
後輪がセルフアライニングトルクを失うほどに横滑りをした時に、インへ巻き込むか否かは、横滑りに
因って生じた摩擦熱がクルマの慣性運動エネルギーをどれだけ相殺するかによって決まります。
横滑りに因って生じた摩擦熱がクルマの慣性運動エネルギーを相殺すれば、クルマの慣性運動エネ
ルギーが小さくなります。 つまり、車速が落ちます。
一方、テールスライドに因ってクルマの進行方向は大きく変わります。
前輪も後輪も最大効率を発揮する横滑り角から大きくかけ離れた横滑り角になります。
適切でない横滑り角は小さな求心力しか生み出しません。
したがって、[小さくなった慣性運動エネルギーによる遠心力] < [低下した求心力] であればテール
スライドの結果としてイン側へ巻き込みます。 逆に、[小さくなった慣性運動エネルギーによる遠心力]
< [低下した求心力] であれば、クルマは進行方向をイン側に向けつつ旋回半径を孕ませます。
ここで問題になるのは、クルマが進行方向をイン側に向けつつ旋回半径を孕ませた場合です。
テールスライドの結果としてイン側へ巻き込んだ現象をオーバーステアと規定するのであれば、それ
以外の現象すべてがニュートラルステア、もしくはアンダーステアに定義されるハズです。
では、クルマが進行方向をイン側に向けつつ旋回半径を孕ませるのは、ニュートラルステアでしょう
か? それともアンダーステアでしょうか?
どちらにも当て嵌まるとは思えません。
では、初心に帰って、モータースポーツ用語として解釈されたアンダーステア/ニュートラルステア/
オーバーステアをそれぞれ力学的に検証してみましょう。
定速で定常円旋回するクルマが増速した場合、遠心力という見かけ上の力が大きくなります。
遠心力は重心に働く横方向(求心力とは逆方向)に働く力と見做すことが出来ます。
重心が前輪軸に近い側にあれば、大きくなった遠心力が前輪の方へより大きく作用しますので、前輪
が後輪よりも強く外側に引っ張られます。 その結果、旋回円の接線に対するクルマの角度が小さくな
ります。
重心が後輪軸に近い側にあれば、大きくなった遠心力が後輪の方へより大きく作用しますので、後輪
が前輪よりも強く外側に引っ張られます。 その結果、旋回円の接線に対するクルマの角度が大きくな
ります。
さて今一度、「クルマが進行方向をイン側に向けつつ旋回半径を孕ませた場合」について考えてみま
しょう。
「クルマが進行方向をイン側に向けるようになる」ということは、軌跡の接線に対するクルマの角度が
大きくなっているという状態に他なりません。
それはオーバーステアと理解されるべきです。
繰り返しになりますが、アンダーステア/ニュートラルステア/オーバーステアは、「円周上を遅い速
度で走っている時に、緩やかな加速をすればクルマの軌跡はどうなるか?」を定義しているのであっ
て、具体的なコーナーリングに関する定義ではありません。 したがって、定義に対して厳格に従うので
あれば、具体的なコーナーリングの事例に対してアンダーステア/ニュートラルステア/オーバーステ
アという表現を使うことは不適切となります。
それでも敢えて具体的なコーナーリングの事例に対して、アンダーステア/ニュートラルステア/オー
バーステアという表現を使うのでれば、アンダーステア/ニュートラルステア/オーバーステアというも
のをクルマの挙動として捉えるべきでしょう。
そう考えた場合、「軌跡の接線に対するクルマの角度が不適切に大きくなっている状態がオーバース
テアであり、その際にイン側へ巻き込むのは、摩擦熱がクルマの慣性運動エネルギーを相殺して減速
したから」となります。
つまり、イン側に巻き込んだからオーバーステアなのではなく、オーバーステアであった時に、摩擦熱
がクルマの慣性運動エネルギーを相殺して減速した結果、要求される求心力が著しく低下したからイン
側に巻き込んだと捉えるべきなのです。
こう考えれば、アンダーステア/ニュートラルステア/オーバーステアという表現を具体的なコーナー
リングに適用することが出来るようになります。
そして、クルマの力学的な運動特性を表現するために用語が必要であるならば、そう捉えるのが合
理的です。
なぜなら、ご質問のようにオーバーステアを、「テールスライドの結果としてイン側へ巻き込んだ現象」
と限定してしまった場合、クルマが進行方向をイン側に向けつつ旋回半径を孕ませた状態を表現する
言葉が無くなってしまうからです。
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