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サスペンション

【荷重移動】荷重移動についてもう少しだけ詳しい話 007
 「ロール時における質量移動の簡易計算」
【荷重移動】荷重移動についてもう少しだけ詳しい話 001
 「箪笥を押す時の荷重移動」
 にて、
 「そして、これに『サスペンションの稼動に因って荷重移動に加わる質量の偏り』が加わります。

 

 この量は、(高度な解析を行わない限り)簡単に算出することはできません。
 とりあえず、「【荷重移動】とは、【力の作用】と【質量の偏り】であって、それ以外の要素をパラメータと して持たない」ということだけ御理解ください。
 走り屋の御託レベルの理解としては、(少なくとも荷重移動という概念に対する理解としては)それで 十分でしょう。
 ・・・ってお茶を濁したのが良くなかったんでしょうねぇ。

 今更乍に「荷重移動はクルマが傾くことに因る質量の偏りが支配的」というトンデモ理論が掲示板に 出ています。

 んなワケないじゃん。

 確かに高度な解析を行わない限り、キチンとした数値は出ないのですが、折角ですので簡易な計算 で近似値を求めてみましょう。

 毎度お馴染みの例、

 車重:1200kg、
 重心高:50cm(0.5M)、
 トレッド幅(タイヤ接地面両端部幅):1.5M
 のクルマが旋回G:0.5で旋回するとき、
 [ 遠心力 ] = 1200(kg) × 0.5(G) = 600(kg)
 [ 荷重移動量 ] = 600(kg) × 0.5(M) ÷ 1.5(M) = 200(kg)
 平衡状態で左右輪の荷重はそれぞれ 1200kgの半分で600kg。
 アウト側前後2輪に加わる荷重とイン側2輪から失われる荷重の合計が200kgなのですから、
 アウト側前後2輪の静止荷重600kgに荷重が100kgが加わり、イン側前後2輪の静止荷重600kgから 荷重が100kg失われるのですから、
 アウト側前後2輪の合計荷重は700kg,イン側前後2輪の合計荷重は500kgになる。
 を使って説明することにします。 

 上の例で言えば、OUT側サスペンションは100kgの荷重増,IN側サスペンションは△100kgの負担減  です。 
 ノーマルの前後サスペンションの合計ホイールレート値が左右ともに5kg/mmであるとき、(とりあえず サスペンションジオメトリのアンチロール効果を無視)OUT側サスペンションは静止状態から20mm縮 み,IN側サスペンションは同20mm伸びます(ブッシュやダンパーの影響も無視)。
  
 

 ↑図を見るだけで質量の移動量が如何に少ないかが分かります。 

 もはや計算するまでもないように思いますが、一応計算。 

 BC:AB=CC’:AA’
 750:500=20:AA’
 よって、AA’=13.33
 重心が750mm横へ移動すると荷重が100%片方へ寄るのですから、13.33mmの移動は(13.33÷750) ×100=1.778%の質量移動。 
 車重1200kgの1.778%が偏った
  ⇒IN側から0.889%が抜けてOUT側へ掛かった
   ⇒1200×0.889÷100= 10.67kgの質量移動。
 ぐらりと傾くノーマルでさえ質量が偏って起こる荷重移動は10.67kgです。 
 しかも、この計算では、サスペンションジオメトリが持つアンチロール効果(これは後述します)を無視  していますから、実際の質量移動量はもっと少なくなります。 
 ノーマル車両は、サスペンションのアンチロールジオメトリが十分に効果を発揮しますから、もし、その 効果でロール量が半分になれば、質量の偏りに拠る荷重移動は5.34kgに抑えられてしまいます。

 単純な力学の作用としての荷重移動は、前述の通り200kg(片側100kg)。 
 ロールに因って発生する質量の偏りは、(アンチロールジオメトリでロール量が抑えられれば)その数%程度と 考えた方が良さそうです。 

 こう書くと「数%も影響するんじゃ看過できないよね」と言われそうですが、それは違います。
 先述の計算式の結果、質量の偏りに因る荷重移動は(アンチロールジオメトリでロール量が半分に抑えられれ ば)5.34kg。
 単純な力学の作用としての荷重移動は100kgでしたから、ロール量をゼロにしても荷重移動は5%強 しか減りません。
 もちろん、サスペンションスプリングを強化しても、ロール量をゼロにすることは出来ません。 
 サーキットONLYなら未だしも、公道も走るナンバー有り仕様の場合、ばねレートを上げてロール量を 半分程度にするのが関の山でしょう。
 ロール量を半分に抑えたなら、減る荷重移動量は3%以下です。

 ばねレートを上げてロール量を半分にすれば、質量移動の量も概ね半分になってしまいます。 
 ですから、スタビも外し、ノーマルよりもばねレートも下げて、さらに車高短にしてサスペンションジオメ トリが持つアンチロール効果までも消して、僅かな旋回Gで激しくロールするように悪改造しない限り、 「荷重移動はクルマが傾くことに因る質量の偏りが支配的」というトンデモ理論は成立しません。
 単純な力学の作用としての荷重移動に対して、質量の偏りが数%上乗せされるということは、限界 域 の特性を語る上で無意味だとまでは言いません。
 しかし、ステア特性を語る時、左右輪は一纏めに された『2輪モデル』として扱われます(拙稿【(01)  アンダーステアって? (オーバーステアって?)】の一番下に貼った 図)。  そういう意味で数%の上 乗せはあまり意味が無いと捉えて良いのではないでしょうか。 


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