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内燃工学

 ハイカムを入れると低速トルクが細くなるのは何故?
【問】 ハイカムを入れると低速トルクが細くなるのは何故?
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【答】 理由はふたつあります。

 ひとつはバルブのリフト量が変わるからです。
 単純に考えれば、高速(高回転)時でも低速(低回転)時でも、シリンダーの容積は変わりませんか ら、どんな使用域でも、吸排気の出入り口面積は広ければ広い程良い様に思えます。
 しかし、低速ではピストンスピードが遅いので、シリンダー内の混合気に「乱れ」が生じません。
 混合気の流れが安定していると、炎が風に乗って移動しませんから、火炎の伝播速度が遅くなりま す。
 ガソリンエンジンの場合、火炎の伝播速度が遅いと、エンドガスまで火が届くのに時間が掛かる為、ノ ッキングの危険性が高くなってしまいます(詳しくは、『【異常燃焼(1)】ノッキング』を参照して下さい)。
 バルブのリフト量が少ないと、バルブの上側よりも下側の方が流路面積が小さいので、吸入気はバ ルブ下側よりも上側の方を多く通る様になります。
 この流れがシリンダー内に縦回転の混合気の流れ(これを「タンブル流」と言います)を作ります。
 この流れで火炎の伝播速度を稼ぎ、耐ノック性が向上するのです。
 逆に言えば、ハイカムの場合、タンブル流が得られなくなるので低速時の耐ノック性が低下し、トルク が細くなるのです。

 もうひとつの理由はバルブの開閉時間が変わるからです。
 空気は質量を持ち、弾力性のある流体ですので、バルブが開閉したからといってスグにシリンダー内 外へ出入りする事ができません。
 特に大きな体積を持つ排気ガスは、ピストンが上死点になっても、その多くが残ってしまいます(これ を「残留ガス」と言います)。
 ですから、上死点を少し越えるまで、排気バルブを開いている必要が生じます。
 このため、吸排気両方のバルブが開いている時間(クランク角度)が存在します(これを「オーバーラ ップ」と言います)。
 空気の吸排気の効率は、流体の動的効果に左右されますので、オーバーラップの時間(クランク角 度)も低回転と高回転で大きく異なります。
 ハイカムを装着する際には、使用目的に合わせたオーバーラップ時間になるように調整します。
 それは勿論高回転志向の調整となりますから、低速時に適したバルブタイミングではありません。
 ですので、低速時のトルクが細くなるのです。

 なお、ハイカムを低速向けのバルブタイミングに調整した場合、高速時にはバルブリフト量が足りて いるもののオーバーラップ時間が不適切なので、充填効率が下がって期待する出力が得られません。
 しかもそれは、低速時にはオーバーラップ時間が適切なので充填効率は得られるものの、タンブル 流が得られないのでノッキングし易くて点火時期を遅角せざるを得ませんから、これもまた期待する出 力が得られなくなってしまうのです。


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